WEBシステム開発のノーザンシステムサービス @ 岩手県盛岡市

文字の大きさ
  • 小に変更
  • 中に変更
  • 大に変更

ホームへ

AIを活用した病害虫診断技術の開発

AIを活用した病害虫診断技術の開発(2017年~)


農林水産省 人工知能未来農業創造プロジェクト

 ノーザンシステムサービスでは、「人工知能未来農業創造プロジェクト」という農林水産省の委託プロジェクトの一環として、AIを活用した病害虫診断技術の開発に携わっています。

 このプロジェクトの背景として、日本の気候と営農形態が多様であるため、発生する病害虫も多様である一方、農業従事者の高齢化や新規就農者の増加により、病害虫の防除技術の継承が困難であることと、諸外国からの種や苗の輸入の増加に伴い、それらについてくる病気や外来生物による新規病害・害虫の発生で、病害虫診断や対策の困難になっていることの二つが挙げられます。そのため、農業従事者が病害虫を簡単に診断し防除できるような仕組みが必要となっています。これを受けて、このプロジェクトではDeep Learningを用いた高精度の病害虫診断の開発することを目的としていて、24府県で主要四作物であるトマト、ナス、キュウリ、イチゴの病害・虫害データを集め、国研、公設試・普及機関、民間企業が、データ収集、技術開発、検証、普及・実用化までを一体となって行っています。

 弊社では病害虫診断AI開発の虫害・害虫診断AI開発を担当しており、AIとICTを活用した農業の活性化に貢献しています。

背景

1. 多様な自然環境やその変化

 日本の農業は平野部の農業地帯のみならず、山岳・中山間から住宅近郊、海岸近郊まで、多種多様な場所で営まれています。さらに、南北に広がる国土と海流の影響により気候も多様であり、発生する病害虫も多様です。

日本の農業

病害虫

2. 病害虫診断や対策の困難性の増大

 日本の少子高齢化が進行している中で、若年人口の都市への流出等により、農村の過疎化と農業経験者の高齢化が深刻な問題となっています。そのため、新規就農者は増加傾向にありますが、防除技術の継承が困難な状況です。また、この苦境に追い打ちをかけるように、野菜生産のための種や苗の輸入量が増加したことで新規病害・害虫による被害が増加しており、病害虫診断の効率化が急務となっています。

農村における人口・高齢化の推計と見通し

農村における人口・高齢化の推計と見通し

新規就農者の推移

新規就農者の推移

2001年以降に都道府県から特殊報として公表された海外侵入病害発生年次変化

海外侵入病害虫

提案課題 AIを活用した病害虫診断技術の開発

1. Deep Learning(深層学習)による病害虫診断

1.1. 従来の機械学習とディープラーニングの違い

一般的な機械学習では人間が手動で特徴量を設定するのに対し、ディープラーニングでは、AIが特徴量を設定することが出来ます。

1.2. AIを活用した病害虫診断技術の開発にあたっての課題

AI診断の課題① 学習用の画像データが必要

  • 海外で開発されているアプリケーションで、日本は対象となっていない
  • 日本の作物や病害虫に対するデータがほとんど存在しない
  • 存在しても著作権の制限により利用が困難

AI診断の課題② 高精度AIの開発

  • グーグルなど汎用Webサービスの高精度化が困難

AI診断の課題③ AIの知財上の取り扱いが不明瞭

  • 自由に使えることが重要
  • 公知化では不十分
  • 公的資金による成果には強く求められる
上記3つの課題をふまえて、3つの研究課題を構成しました。
  1. 主要野菜で発生する重要病害虫による時系列被害の電子画像取得とデータベース構築
    • オープンデータとして公開
  2. データベース化した電子画像に基づき病害虫診断を実現する高精度人工知能の開発
    • アルゴリズムのオープンソースソフト化
  3. 高精度病害虫診断人工知能を基盤とした生産現場で使用可能なウェアラブル端末用診断アプリケーションの開発
    • 行政、農業現場での実用化を目指す

研究課題

1. "オープンイノベーション"の促進

 オープンイノベーションとは研究開発の成果を再利用可能な形で公開するとともに,内外のリソースを活用してイノベーションをすすめる新しいイノベーションの形態です。日本再興戦略2016、科学技術イノベーション総合戦略2016等でも、推進が求められています。農業におけるAI活用のインフラとし、農業全体のイノベーションと成長に質すると考えます。

1.1 病害虫画像のデータベース構築

人工知能の開発

データベース構築

 主要四作物の病害虫被害の検証および電子画像データのファイリングと日本国内で発生する重要病害虫に関する画像情報等のデータベースの構築と公開のために、寒冷地から温暖地まで24府県でそれぞれ病害虫10種を対象に、対象作物に発生した病害虫の画像を撮影します。病害虫の状態が初期から晩期まで分かるような画像とし、発生日時や気象条件などの付帯情報も含めて収集し、データベースを作成します。このデータベース構築には、専門家による判定と標本情報を使用することで、高い信頼性を担保しております。ここで収集したデータがDeep Learningでの学習に使用されることになります。

2. 病害虫を診断する人工知能の開発

 病害虫を診断するAIは病害と虫害・害虫で様態が異なるため、それぞれ個別で開発を行なっています。一つ目の課題で収集したデータを学習用データとしてDeep Learningで学習を行い診断AIを作成し、病害と虫害・害虫の診断AIを横断利用できるサーバを構築します。診断AIについてはオープンソースとして公開する予定となっています。弊社ではこの病害虫診断AI開発の虫害・害虫診断AI開発を担当しております。

2.1 弊社の研究「データセットの作成」

【目的】農研機構 農業環境変動研究センター様より提供いただいた虫害画像から、2部位(葉・果実)の画像を抽出

【方法】物体検出ネットワーク Shapemask [1] を利用し、画像から識別対象部位を抽出

【結果】背景除去により、識別モデルを虫害自体の特徴に着目させる効果(過学習の抑制)を確認

ShapeMask による背景自動除去の例(元画像)

苺の写真

ShapeMask による背景自動除去の例(背景除去後)

苺の写真(背景除去)

ShapeMask による背景自動除去の例(元画像)

葉の写真

ShapeMask による背景自動除去の例(背景除去後)

葉の写真(背景除去)

2.2 弊社の研究「識別モデルの学習」

【目的】識別モデルの学習

【方法】畳み込みニューラルネットワーク EfficientNet-B6[2] を使用し、データセットを学習させて虫害診断AIを構築

【結果】診断時の平均精度86.7%
※ 学習に使った画像の撮影場所とは全く異なる地域で撮影した画像を使って検証した結果で、実運用に耐えられるレベルです。

今後は、初期被害微細特徴の分類精度向上を目指します。

Grad-CAM[3] による着目領域抽出例(トマト果実、アザミウマ類)
元画像

Grand-CAM元画像

赤枠(被害箇所)拡大

害虫被害

Grad-CAM

Grand-CAM

虫害識別器のクラス別識別精度

虫害識別器のクラス別識別精度

[1] Weicheng Kuo, Anelia Angelova, et al. “ShapeMask: Learning to Segment Novel Objects by Refining Shape Priors” arxiv:1904.03239, 2019.

[2] Mingxing Tan and Quoc V. Le. EfficientNet: Rethinking Model Scaling for Convolutional Neural Networks. ICML 2019. arxiv:1905.11946. 2019.

[3] R. R.Selvaraju, A. Das, R. Vedantam, M. Cogswell, D. Parikh, and D. Batra. Grad-cam: Why did you say that? visual explanations from deep networks via gradient-based localization. arXiv:1611.01646, 2016.

本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「AI を活用した病害虫識別技術の開発」JP17935051、ならびに官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の補助を受けて行いました。また、病害虫被害画像の収集にご尽力頂いた参画府県の公設機関の皆様に心から感謝します。

3. スマートフォンなどにより病害虫の同定を行うアプリケーションの開発

 3つ目の課題は、スマートフォンなどにより病害虫の同定を行なうアプリケーションの開発です。農作業中に発見した病害虫をスマートフォンで撮影し、画像と付帯情報をサーバに送信して病害虫診断AIにより同定を行ない、同定した結果をスマートフォンに表示します。また、弊社ではARグラスでの実装を想定した開発も行っております。このページの下部にARグラスによる農作業と、従来の農作業と比較した動画を掲載しております。ぜひ動画(4分08秒)をご覧ください。

 従来は、スマートフォンを取り出し、調べるというアクションが必要になりますが、ARグラスを用いることで動画のように作業中に視界に入った病害虫の自動検出が可能となり、より作業が効率化されるのではと考えております。

 ARグラスによる病害虫の自動検知をすることで、初期症状の見落としによる対処の遅れを防止し、病害虫に対する的確な早期対処を推進し、被害損失の最小化、農業生産の増収へ寄与します。

AIとICTを活用した農業の活性化

 AIとICTを活用した農業の活性化を図り、多様な人々の参加を可能とした農業の活性化に貢献していきます。

AIとICTを活用した農業の活性化

ページの上部へ戻る